トータルステーションとは?使用方法方や機能ごとの違い・種類を紹介
測量や建築・土木分野では、「トータルステーション」と呼ばれる測量機器が活用されています。距離と角度をどちらも測定できる機器で、外部に測定データを出力できるなど利便性の高い機器としても知られています。
この記事では、トータルステーションの概要や「トランシット」と呼ばれる機器との違い、具体的な使い方や種類について解説します。トータルステーションがどのような状況で使われているのか、機器の種類ともあわせて説明していますので、機器選びの参考にしてください。
トータルステーションについて
トータルステーションは、地面に立てて目標地点との距離や角度(鉛直角・水平角)を測る測量機器です。機器を地面に立てて目標物を設置し、座標を登録することで、測量点の座標を導き出せるシステムです。
建築や土木の現場では正しい距離や角度のデータが必要になるため、測量を行います。その土地がどのような位置関係になっているのか、トータルステーションで距離と角度を同時に測定します。
角度を測る「トランシット(セオドライト)」や距離を測るEDM(光波距離計)といった測量機器もありますが、トータルステーションは両方の機能をあわせもっているため、1台で効率的な測定ができます。
座標測量のほかにも基準点測量・応用測量・起工測量・定点測量・杭打ちといった幅広い測量項目に対応しています。自動追尾トータルステーションは1人の作業者によるワンマン測量が可能です。
トランシットとの違い
トランシットは、セオドライトとも呼ばれる角度の計測機器です。
ヨーロッパではセオドライト、アメリカではトランシットと地域ごとに呼び名が異なっていたため、日本では両方の名称が定着しています。どちらも角度を測る機器を指し、基本的な機能や使用用途に違いはありません。
トータルステーションの使用方法
ここからはトータルステーションの使用方法を確認していきましょう。
- 三脚の設置
- 三脚位置の調整
- 求心作業
- 整準作業
- 測量準備
はじめに、地面に三脚を立てます。三脚の足を開いて傾きや凹凸がなく安定した場所を選び、三脚が沈み込みがない場所に立てます。風や波などの影響を受ける場所も避けてください。
三脚の上にトータルステーションを載せます。歪みや傾きがないように、三脚の真上にトータルステーションを置いて、ネジをしっかりと締めて固定します。このプロセスが終わると、トータルステーションの中心と測点を同一鉛直線上に一致させる求心作業に入ります。
求心望遠鏡を使った求心作業では、トータルステーションを設置した状態で望遠鏡を覗き込み、整準ねじを回して、測点を二重丸の中心に入れます。整準ねじを回していくと機器が斜めに向くこともありますが、求心望遠鏡の中で測点の位置を合わせてから機器を水平にします。
中心の位置合わせが終わったら、機器を水平にする整準作業に入ります。整準の方法は機器によって異なるため、取扱説明書などを確認して正しい方法で作業を進めてください。
一般的な整準方法は、トータルステーションの整準台についている気泡管の中の気泡を移動させて行います。気泡が中心部になく、どこかに寄っているときは、寄っている方向にある三脚の脚を短くするか、もしくは気泡と遠い位置の脚を長くして、気泡が中心部に来るように調整します。
三脚のねじを緩めながら円形気泡管の気泡を中心に導いたら、再度ねじを締めます。こうして機器が水平になり、トータルステーションの位置が整います。
本体を回してどの角度からでも気泡が中心部にあることを確認しましょう。どこかで気泡がずれているときは、どの向きからでも中心部に気泡が来るように整準を繰り返してください。
水平がとれたら、トータルステーションの電源を入れて座標を入力します。方法は機器によって異なるため、取扱説明書にしたがって作業してください。
水平・ピント合わせ・座標の入力を終えると、正確な位置情報が取得できます。すべてを完了してから測量作業に入ります。
トータルステーションの使用では、正確な手順にしたがってトレーニングを受けることが大切です。ワンマン作業に取り掛かるためには、一般的な2人作業の方法も知っておく必要があります。
トータルステーションは精密機器のため、振動や落下、乱暴に取り扱わないように注意しましょう。トータルステーションのキャリブレーション(校正)も定期的に実施してください。
測量作業は屋外で行われるケースが多いため、周囲の状況にも注意が必要です。車両を避けて安全な場所で測定を行います。
トータルステーションの種類
トータルステーションには、搭載されている機能に応じて次のような種類があります。
- 一般的トータルステーション
- 自動追尾トータルステーション
- 電子野帳搭載トータルステーション
- ノンプリズムトータルステーション
どのような機能や特徴があるのか、詳しくみていきましょう。
一般的トータルステーション
ターゲットと呼ばれる目標地点に照準を合わせてボタンを押すと、距離や角度が計測できるトータルステーションです。
目標地点には目標物となるターゲット(またはプリズム)を持つ人が1人立ち、トータルステーション側にも1人の作業者が立って、2人で測量を行います。座標測量や位置出しなどの用途で行われています。
自動追尾や電子野鳥機能は搭載されていませんが、正しく使用することで精度の高いデータが得られます。
自動追尾トータルステーション
自動追尾トータルステーションは、ターゲットやプリズムを自動で追尾して、距離と角度を測る機種です。
目標地点に作業者が立つ必要はなく、作業者1人でのワンマン測量が可能です。測定できる距離は製品によって異なり、速さや機動力を高めたものや測定距離が100m以上あるものも選べます。
電子野帳搭載トータルステーション
電子野帳とは、過去のデータを記録・管理できる機能です。電子野鳥搭載トータルステーションは、観測(放射・対回)や面積計算など利便性の高い測量プログラムが内蔵されています。
高速測距やデータの保存、連続使用に適したモデルなどもあり、測量データを管理・活用したいときに適した機種です。
ノンプリズムトータルステーション
ノンプリズムトータルステーションは、目標地点でターゲットやプリズムを使用しない機種です。
測点に直接レーザー光を当て、そこからの反射光を利用して距離を測定します。機種によって対応範囲は異なりますが、500mほどの距離を測れるものもあります。
プリズムが設置できない環境でも使用できるので、ワンマン測量や作業の効率化にも役立ちます。
トータルステーションの特徴・機能と使用用途で選ぶ
今回はトータルステーションの概要や使用方法、機器の種類などを紹介しました。
トータルステーションは角度と距離を個別の機器で測る必要がなく、1台でワンマン測量にも対応しています。トランシットやセオドライトなど、トータルステーションと似た機器もあります。名称や機能の違いに注目し、測量内容に合う機種を選びましょう。
測量現場では正しい使い方と安全に配慮し、機種ごとの手順にしたがって測定を行うことが大切です。電子野鳥など、搭載されている便利機能も活用して、測量に役立ててみてはいかがでしょうか。
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