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水位の計測に使われる水位計の活用方法・種類と主な活用シーン

水位計(水位センサー)は、私たちの身近にある自然環境や人工物で水の高さを測定する装置です。

気候変動などの影響を受けやすい場所では、水位の観測や監視が欠かせません。施設や工場の稼働、災害の予防や防災施設や構造物を管理する際にも、近隣を流れる河川やダムなどの水位を正しく測定する必要があります。

ここでは、水位計の種類と活用シーンについて具体的に説明します。水位計がどのように活用されているのかについて解説します。

水位計とは

水位計は「水位センサー」「レベルゲージ」とも呼ばれ、基準面からどの程度水位が上がっているかを確認するための測定機器です。

基準面からの水面の位置を自動検知し、その時点での水位をデータとして記録し、必要な情報を送信します。
河川や貯水池、下水道やダムのように水位が変動する場所に設置されています。

一般社団法人河川情報センターでは「危機管理型水位計」として、水位計で計測した情報をリアルタイムに公開するシステムを公益事業として実施しています。また、国土交通省では防災情報の自治体・河川管理者・住民が水位と河川の状態を把握できるように、通常水位計と危機管理型水位計を併用したサービスを提供しています。(※1,2)

近年では温暖化が原因で発生する水害や農業への影響が深刻な問題となっていることから、土地や建物を守るための水防対策にも活用されています。水位計は、環境変化に対応するために不可欠な機器なのです。

※1参照元:一般社団法人河川情報センター「危機管理型水位計」
※2参照元:国土交通省「河川水位情報がまとめて見られるようになりました~危機管理型水位計と通常水位計の水位情報をまとめて表示~」

主な水位計の種類

水位計には、次のような種類があります。

  • 電波式水位計
  • フロート式レベル計
  • ガイドロープ式レベル計
  • 超音波レベル計
  • 静電容量式レベル計
  • 差圧式レベル計
  • 圧力式レベル計(投げ込み式水位計)

水位を測定する方法や特徴についてみていきましょう。

電波式水位計

電波式水位計は、電波を利用して水位を測定します。水中に設置された送信機から電波を発信し、測定物に当たった反射波を受信機が受け取って解析します。電波が伝わるまでの時間や反射波の強さから水位が計算できる仕組みです。

水面に接しない非接触型の水位計で、河川やダム、工場といったさまざまな場所で使われています。

フロート式レベル計

フロート式レベル計は、フロート(浮き)を使って水位を測定します。水位の変化に合わせてフロートが上下する仕組みで、フロートが上がると内部の浮子も上昇し、水位が測定できる仕組みです。

シンプルな構造のため使いやすく、タンク内など水の激しい流入がない場所から河川まで幅広く使用されています。

ガイドロープ式レベル計

ガイドロープ式レベル計は、ガイドロープと呼ばれるロープを使って水位を測定します。水中に設置したガイドロープが水位の変化によって長さを変えるため、変化をセンサーによって検出し、水位を計算できる仕組みです。

電波式や超音波式のような放射角がつくられないため、限られた場所への設置に適しています。

超音波レベル計

超音波レベル計は、超音波パルスを使って水位を測定します。水位センサーから超音波を発信し、測定対象に当たった反射波が戻ってくるまでの時間から水位を計測する仕組みです。

電波式と同じように反射を使った計測方法のため、非接触で水位が測定できます。大掛かりな装置を取り付ける必要がなく、比較的低コストで導入可能です。

関連記事:超音波流量計とは?原理・特徴・メリットと超音波以外の流量計を紹介

静電容量式レベル計

静電容量式レベル計は、電極間に液体が入ったときの静電容量の変化を使って水位を測定します。水中に設置されたセンサーの静電容量が変化すると、この変化を検出して水位を計算する仕組みです。

微小な電圧の変動も測定する高い精度と、測定対象に与える影響が少ないことが特長です。低消費電力で動作するため、省電力化に貢献する機器です。

差圧式レベル計

差圧式レベル計は、タンクの底面にかかる水の圧力を利用して水位を測定します。水中に設置された2つの圧力センサーから圧力差を検出し、水位を計算する方法を採用しています。

差圧計測に使用する機器は頑丈な設計で、過酷な環境にも耐えられる構造です。液体・気体・蒸気といった媒体に対応し、幅広い用途や環境下で使用されています。

圧力式レベル計(投げ込み式水位計)

圧力式レベル計は「投げ込み式水位計」とも呼ばれ、センサーを水中に投入して水位を測定します。測定したい場所へ行き、圧力センサー付きの装置を水中に投げ込むだけで設置が完了する仕組みです。

圧力センサーは水の圧力から水位を測定します。迅速かつ簡便に設置が可能で、省人化や時間が限られた状況下で活用されています。持ち運びや取り扱いもしやすく、多くの現場で利用されています。

関連記事:高低差の確認に使われる測量機器「レベル」の特徴・種類と使用方法

水位センサの主な活用シーン

水位センサは、河川のような自然環境に加えて、砂防や調整池といった人工的に造られた環境でも利用されています。

ここからは、10か所の活用シーンごとに水位センサの活用方法を見ていきます。

河川

河川では、水位を常時観測し洪水のリスクを予測します。リスクが高まったときにはすばやく警報を発出し、自治体や河川管理者が対応にあたります。

リアルタイムの水位データが得られることで、近隣住民への呼びかけもスムーズに行えるため、日本全国で防災対策に活用されています。過去の水位データを分析し、洪水や水害が発生しやすい時期を予測するといった対策や計画の立案にも使用されています。

災害対策以外では、水質センサーと組み合わせてリアルタイムに水質変化を監視します。常時監視のため、異常発生時に迅速に対応できる点がメリットと考えられます。

砂防

土砂災害の危険から土地や建物を守る砂防では、降雨により河川などの水位をリアルタイムに監視し、土砂災害のリスクを予測することができます。

万が一土砂災害のリスクが高まったときには、発生リスクの上昇や警報を地域に知らせて避難を促します。自治体や砂防事務所にとっても、水位計から得られるデータは非常に重要な情報源として活用されています。

その他の活用シーンとして、土砂が上流から流れ込み、ダムの機能を低下させる堆砂対策や、水位計のデータを活用した水域状況の把握、および環境保護対策の一環としても用いられています。

調整池

洪水被害を予防するために設けられる調整池では、水位を監視・管理し氾濫リスクを抑えるために水位計が使われています。用水路や河川に繋がる水量をこまめに調整し、池が満水にならないようにしています。

生態系保護のためにも、水量を適切に管理する必要があります。希少種や多様な生物が生息する調整池では、水量が多すぎても少なすぎても生態系のバランスが崩れる可能性があるため、水位を適切に管理して環境保護に努めています。また、池のメンテナンス作業や機能の維持にも水位管理が欠かせません。

ダム

巨大な水がめとしての機能をもつダムは、水位計によってリアルタイムに貯水量を管理し、上流と下流の流れを調整しています。特に水力発電を行っているダムでは、水位データを基にして発電量を最適化しています。

河川と同様に、洪水予測にも活用されています。ダムの貯水量には限りがあるため、河川から流れ込む水の量が急激に増加する場合は、早期に放流を開始し満水を超えないように調整します。ダムの存在によって周辺地域での自然環境が変化する可能性があるため、適切に水位を管理する必要があるのです。

樋門

樋門(ひもん)は、堤防の中に通るコンクリート製の水路です。水の流れを調節し、洪水を防止するために設けられています。樋門に設置された水位計は河川と同じく内部の水位を常時監視し、水位を正確に把握しています。

樋門の内部を流れる水は農業用水としても使われるため、水質の監視にも水位計が役立てられています。水位計と水質センサーを組み合わせて樋門周辺の水質と水位を同時に監視し、異常が発生した場合は状態を確認のうえ、すみやかに対応します。

験潮所

海上保安庁が管轄する験潮所(けんちょうじょ)では、水路の確保を目的とした潮位の観測に水位計が活用されています。船が潮位の低い場所に入ってしまうと砂底などにはまり込んでしまうため、適切な水深のある場所を確保する必要があるのです。

水路の確保以外には、潮位の監視を行って海面変動を記録しています。日本の周辺から海外の遠隔地域まで、さまざまな場所で発生する津波や海底火山の噴火による潮位変化を監視します。津波が観測された場合は迅速に沿岸部からの避難を指示します。

潮位のデータを気象予測モデルと組み合わせることによって、台風などの気象に関する予測精度を向上させる効果が期待されます。また、平常時には海岸の侵食状況を把握するためにも活用されています。

水処理施設

水処理施設では、汚水処理のプロセスを適切に管理するため、水位計が使用されています。貯水タンク内の水位をチェックし、給排水を適切な水量で実施します。ポンプの運転などは自動化されているため、水位計による常時監視が重要な役割を果たしているのです。

水位計が取得したデータを収集・分析し、施設内設備のメンテナンス時期の予測や異常の早期発見にも役立てられています。正しくデータを収集できていない場合、水位計または設備に何らかの不良があると判断できます。自動化されている施設では、データ分析による設備の維持管理の面でも重要な役割を果たしています。

工場

工場では、洗浄や冷却といったプロセスで水が使われています。貴重な資源である水を適切に使用するために、貯水タンクの水位管理や排水管理に水位計が使用されています。

水以外の液体についても、同様に水位計を使って常時監視が行われています。タンク内の水位をデータとして取得することで、目視をせずに液体の量を把握できる仕組みです。

オートメーション化された工場では、水位の常時監視とともにプロセスの制御を組み合わせています。水位が増えたタイミングで中身をタンク内から排出し、次の工程へ自動的に移るといったプロセスなどが挙げられます。

農業用水路

水田のように水を必要とする環境では、農業用水路の水位管理が重要な役割を果たしています。水位計がリアルタイムで水量を監視し、水があふれすぎないように水門を閉めるなどして、水の供給量をコントロールしています。

農業用水路では、用水路内部に砂などが堆積しないよう、水位計のデータを活用して堆積物や異常な水位変動を把握し、適切にメンテナンスを実施します。これにより、水路の機能を長期間維持します。

ため池

ため池は、河川や湖沼が少なく農業用水を確保する目的で造られた人工池です。

雨水を溜める場所としても活用されており、土砂の流出や洪水の発生を防ぐ役割も果たしています。そのため、水位が急激に上がったときには適切な排水措置を講じて、周辺地域への影響を軽減しています。

調整池と同様に、ため池にも生物が生息しています。なかには希少な生物が暮らしているケースもあり、生態系を維持するために水位計による調整が行われています。(※)

※参照元:東京大学環境地水学研究室「ため池工事における希少生物の保護について」

水位計の役割と種類を理解する

今回は、水位計の機能や特徴、主な種類と活用方法について紹介しました。

水位は海などの自然からダムや樋門といった人工物まで、さまざまな場所で監視・計測されています。農業・都市開発・災害予防の目的に加えて、自然環境を維持し保護するためにも活用されています。気候変動や自然の変化と上手に付き合い、社会生活とのバランスをとっていくためにも、水位計が社会生活における重要な役割を担っています。

水位を調べるときには、対象の場所や環境に適したものを探す必要があります。計測方法や機能面も比較し、正確な測定が可能なものを選ぶ必要があります。

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