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膜厚計とは?概要・種類ごとの使い方と選び方のポイント

塗装を必要とする作業では、塗装面が均等かつ正しく塗装されているかを確認するために膜厚計と呼ばれる機器を使用します。

膜厚計は金属・樹脂・コンクリートなどさまざまな塗装膜の厚みを検査し、渦電流式や電磁式など非破壊で検査を行うことができます。素地と被膜の種類から、用途に応じた膜厚計を選びます。

この記事では、膜厚計の概要や種類、種類ごとの使い方について紹介します。膜厚計を選ぶ際も取り上げていますので、機器選びの参考にしてください。

膜厚計について

膜厚計(まくあつけい)は、塗装の厚さを測定する機器です。

塗装は日常生活に欠かせないものです。生活で使用する車や金属・木工製品、道路や建物の屋根など、さまざまな物に対して行われています。対象物の保護・美観や装飾・機能性の付加といった目的があり、塗膜が素地に対して均一かつ正しく密着していなければなりません。

塗膜の状況を調べる塗膜検査は、製造ラインでの点検や構造物のメンテナンス時に行われます。塗装した物の機能や美観を損なわないためにも、膜厚計による検査が重要です。

膜厚計は、素地の種類と被膜の種類から機器の種類を選びます。

【素地・被膜の種類と対応する膜厚計】

分類素地の種類被膜の種類測定方式
磁性体鉄・鋼・フェライト系ステンレス非磁性体塗装電磁誘導式
非磁性体アルミ・銅・オーステナイト系ステンレス絶縁性被膜渦電流式・超音波式
その他コンクリート・木材・金属防水塗膜超音波式

※上記の種類は一例です。

素地に木材・コンクリート・プラスチックなどが使われている場合、電磁誘導式や渦電流式は使用できません。その場合は超音波式膜厚計を選ぶか、破壊式の計測方法を選択します。

膜厚計の種類と使い方

膜厚計は素地・被膜の種類と用途に応じていくつかの種類に分かれています。機器の種類は次のとおりです。

  • 渦電流式膜厚計
  • 電磁式膜厚計
  • デュアル式膜厚計
  • 分光干渉式膜厚計
  • 超音波式膜厚計
  • 赤外線膜厚計

どのような機能や特徴があるのか、詳しくみていきましょう。

渦電流式膜厚計

渦電流式膜厚計(渦電流式膜厚計)は高周波電界によって渦電流を起こし、電流の大きさと塗膜の厚みとの電気的相関性を利用して塗膜の厚さを測る機器です。

機器の先端を塗膜に接触させたときに発生する渦電流の強さ・弱さで膜厚を計測する仕組みです。

測定対象は磁石に付着しない非磁性体の金属で、アルミや真鍮、オーステナイト系ステンレスなどが挙げられます。

電磁式膜厚計

電磁式膜厚計は、磁石を引く力(磁束密度:じそくみつど)を利用して塗膜の厚さを測る機器です。

機器には電磁石が使われており、塗膜に接触させたときに発生する磁束密度の変化から膜厚を計測する仕組みです。

測定対象は鉄・鋼・フェライト系ステンレスのような磁性体、磁石に付着する性質をもつ金属が素地となっている場合で、素地の上に非磁性体の塗装が施されている場合に限られます。

デュアル式膜厚計

デュアル式膜厚計(デュアルタイプ膜厚計)は、電磁式膜厚計・渦電流式膜厚計の機能を搭載した機器です。

磁性体または非磁性体のどちらにも対応できるので、機器を検査ごとに替える必要がなく利便性の高い測定機器といえます。

高性能なデュアル式膜厚計は、素地を自動的に判別し、対応する測定モードに切り替えます。多機能でありながらコンパクトなサイズ感のもの、シンプルでわかりやすい操作性の膜厚計も選べます。

分光干渉式膜厚計

分光干渉式膜厚計(反射分光式膜厚計・光干渉膜厚計)は、透明膜に光を当てたときに表面で跳ね返る光と膜の内部で屈折し、基盤の表面に到達して跳ね返る光が重なる「光の干渉」を活用して塗膜の厚さを測る機器です。

2つの反射光の波長が一致すると光は強くなり、波長がずれると弱くなります。この位相に応じた強度の変化から膜の厚みを測定します。

電磁石などを使わず光を当てる方式のため、非接触で多層膜や薄膜に対応します。これまでの膜厚計では対応できなかった高精度な計測も可能な膜厚計です。

超音波式膜厚計

超音波式膜厚計は、超音波の伝搬時間を計測して塗膜の厚さを測る機器です。

測定対象は金属または非金属の素地で、プラスチックや木材の測定も可能です。測定対象の表面に針を接触させて超音波を放ち、素地から反射して戻ってくるまでの速度を計測して塗膜の厚さを求めます。

超音波式膜厚計は、測定対象の材質によって値が異なるため、事前に調整(キャリブレーション)が必要です。

赤外線膜厚計

赤外線膜厚計は、測定対象に赤外線を照射して透過光や反射光を分光し、そこで得られるスペクトルから塗膜の厚さを測る機器です。

特定の波長が塗膜の厚さや材質に合わせて吸収されるという紫外線の性質を利用し、赤外線の吸収率と膜厚の関係性を参照して測定対象の塗膜の厚さを計測します。

測定対象の塗膜の表面や計測中の振動に左右されにくく、単層膜や多層膜にも対応し、いずれも非接触で計測できます。アクリルやシリコンといった材質に対応している機器もあります。

膜厚計を選ぶ際のポイント

膜厚計を選ぶ際のポイントは次の3点です。

  • 素地や被膜の素材
  • 計測できる被膜の厚さ
  • 計測の頻度

膜厚計にはさまざまな種類がありますが、測定対象に適した機器を選ぶことで正確性の高い結果が得られます。

ポイント①素地や被膜の素材

測定対象の素地と被膜がそれぞれどのような性質をもっているのか確認しましょう。たとえば、素地が鉄(磁性体)で非磁性被膜が使われている場合、電磁式膜厚計が適しています。

膜厚計の選定を間違えると、正しい測定結果が得られない場合があります。素地と被膜それぞれの材料や性質をよく確認し、機器を選んでください。

ポイント②計測できる被膜の厚さ

膜厚計が測定できる被膜の厚みは機種ごとに異なり、計測範囲外になると正しい結果が得られないため注意が必要です。

測定対象の塗膜がどの程度の厚みになるのか事前に把握し、その厚みに適した機器で計測を行ってください。

ポイント③計測の頻度

膜厚計をどの程度の頻度で、どの環境で使用するかも考慮したいポイントです。

「屋外の同じ場所で定期的に使用する」「膜厚計を異なる場所で使用する(持ち運ぶ必要がある)」というように、目的に合わせて使い勝手の良い機器を選びましょう。

塗膜に適した膜厚計の種類と使い方をチェック

今回は、膜厚計とはどのような機器なのか、概要や種類、選び方のポイントについて紹介しました。

膜厚計は対象物の塗膜の状況を把握するために欠かせない計測機器です。測定対象の素材や計測方法によっていくつかの種類があり、使い方や特長にも違いがあります。対象物の素材や計測の目的などを考えて検討しましょう。

継続的、長期的な使用には購入を検討したいところですが、短期間や単発の測定では導入コストを考え、レンタルもご検討ください。

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