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コンクリート試験とは?試験の種類・内容・必要な計器を紹介

コンクリート試験とは、構造物や建造物に使われるコンクリートの性能や品質を評価するために実施される試験のことを指します。
コンクリートは耐久性や安全性が求められる建物・道路・橋梁などに活用されている素材ですが、セメントや砂など複数の材料から造られるため、求められる強度や耐久性を満たす必要があります。
そこで、構造材料としての強度や安全性を確認するために、空気量試験やスランプ試験などが実施されます。
この記事では、生コンクリートに対して行われる試験について、試験の概要や種類を紹介し、試験に使用される計測器の種類も取り上げます。

コンクリート試験とは

コンクリート試験とは、材料の状態である生コンクリート(生コン)が十分な流動性や作業性(ワーカビリティ)を有しているか、また硬化した際に強度や耐久性を確保できるかを確認する試験です。
コンクリートの試験方法や品質基準は日本産業規格(以下、「JIS規格」)において「JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート)」で定められており、それを適切に満たすことで施工後の長期的な耐久性や強度を確保できます。
生コンクリート(生コン)の品質を確認する検査として、スランプ、空気量、コンクリート温度、塩化物含有量と並んで、「単位水量試験」も実施されます。
ここでは「単位水量試験」の方法やその詳細について解説します。

コンクリート試験の種類

コンクリートに対して行われる試験には、「スランプ試験」や「空気量試験」などが挙げられます。

いずれもコンクリートの性能や強度を確かめるための試験です。

スランプ試験

スランプ試験は、コンクリートの品質検査や流動性(ワーカビリティ)を測定するための試験に該当します。
スランプコーンと呼ばれる円錐形の容器を使い、コーンの中にコンクリートを三層になるように詰めながら、棒で均一に突いて固めます。固めてからコーンを持ち上げると、自重でコンクリートが沈み込んでいきます。
このときのコーンの高さと沈み込んだコンクリートの中心点の高さを差として求め、値が大きいほど、コンクリートの流動性が高いと判断されます。スランプ試験では、コンクリートを実際に使用した際の作業性や施工性、さらに材料としての硬さや水分量などの性能も確認できます。
不適切な硬さの場合は施工が困難となり、反対にスランプ値が高すぎると過剰な水分量を示す可能性があるため、施工に適した材料を判断するうえで不可欠な試験です。

空気量試験

空気量試験とは、コンクリート中に含まれる空気の割合を測定するための試験です。
通常、コンクリートには水分や空気が含まれており、空気量が過剰になると、耐久性や施工性の低下を招く可能性があり、施工性に悪影響を及ぼすおそれもあります。耐久性が重視される構造物や耐凍害性を必要とする環境では、空気量試験の結果が重視されます。
「圧力法」は専用の測定器を使ってコンクリートに圧力をかけ、変化を測定して空気量を求めます。「容積法」は、コンクリートと水を混ぜて発生した空気量を測定する方法です。
試験によって求められた空気量から、コンクリートの耐久性を推測することができます。適切な空気量であれば、コンクリートの耐久性向上や一定レベルの施工性、仕上がりの均一性を確保しやすくなります。

塩化物含有量試験

塩化物含有量試験は、コンクリートおよびその構成材料に含まれる塩化物イオン量を測定する試験です。
塩化物イオンが過剰に含まれていると、鉄筋コンクリートを製造する際に鉄筋の腐食を促すおそれがあります。そのため、塩化物イオンが過剰に存在していないかを確認する目的で試験が実施されます。
「化学分析法」は試料を使って酸による溶解、または滴定法によって塩化物イオン濃度を測定します。「電気化学的方法」は、試料中の電気的特性を測定し、塩化物濃度を推定します。「粉末X線回折法」は試料中の結晶構造から塩化物の存在を確認する方法です。
塩化物イオン濃度を適切に把握することは、腐食リスクを事前に予測し、補修を講じる際の指標になります。

強度試験

強度試験は、硬化した後のコンクリートに行われる圧縮・引張強度を測る試験です。
コンクリートが設計通りの性能を発揮できるかを確認する方法で、硬化した状態のコンクリート構造物の安全性や耐久性を確かめます。既存の構造物や建造物の強度を評価し、今後の補修計画の策定にも活用されます。
「圧縮強度試験」はコンクリートの試験体を用意し、プレス機で圧縮荷重をかけていきます。破壊されたときの最大荷重を測定します。「引張強度試験」はコンクリートの試験体に引張強度を測定する方法ですが、直接試験されるケースが少ない方法です。
「曲げ強度試験」はコンクリートの試験体に曲げ荷重をかけて、破壊されたときの荷重から曲げ強度を算出する方法です。道路や床スラブを造る際に行われます。
これらの試験によって、建設現場や工場で生産されるコンクリートが基準や仕様を満たしているかを確認できます。また、構造安全性の評価として鉄筋などの材料と組み合わせた際に本来の能力を発揮できるかを推定できます。

単位水量試験

単位水量試験とは、生コンクリートの単位体積あたりに含まれる水の量(単位水量)を測定する試験です。
主にコンクリートの強度・耐久性・作業性をはかるために実施されており、水分量を適切に管理する目的も含まれます。
品質管理としてコンクリート内に適切な水量が確保されているかを確認します。水が多すぎる場合はコンクリート材としての強度が低下するおそれがあり、水が少なすぎると施工性や耐久性の低下が疑われます。
「蒸発法」はコンクリート試料の水分を蒸発させて、減少した量から水分量を測定します。「化学分析法」はコンクリート試料の成分を分解して、水分量を分析します。「赤外線法」は赤外線を照射して含水率を測定する方法です。
コンクリート内に必要以上の水分が含まれている場合は、水セメント比を調整します。単位水量を確認することで品質向上に向けた適切な対応が可能となり、設計性能を満たすコンクリートとしての品質を確保しやすくなります。

湿度試験

湿度試験は、コンクリートの表面や内部の相対湿度を測定し、硬化や乾燥の進行状況を確認するために行われます。
コンクリートの湿度を測定することで、将来的なひび割れのリスクや耐久性への影響を予測する手がかりになります。また、コンクリートの養生中に湿度環境を適切に保つことで強度を維持できます。
湿度センサー法では、コンクリート内部にセンサーを挿入し、相対湿度を測定します。重量測定法(乾燥重量法)はコンクリート試験体を乾燥させる前後で重量を計測し、その差から湿度を推定します。表面湿度測定は、表面センサーを使用してコンクリート表面の湿度を測定するための手法です。
コンクリートを材料として建築物などに用いる際、材料としての耐久性を適切に評価する必要があります。特に凍害や化学的腐食への耐性を高めるための湿度管理が求められるため、湿度試験が重要な役割を果たしています。

関連記事:コンクリートの養生とは?養生の方法・種類と失敗事例を解説

コンクリート試験に必要な計器

コンクリート試験に使用される計器は、試験の種類や目的に応じて異なります。
「スランプ試験」では、生コンクリートの流動性などを確認するためにスランプコーンや突き棒が使われます。「空気量試験」は、生コンクリートに含まれる空気を計測するために、エアメーターや密閉容器を用います。
鉄筋コンクリートを造る際に行われる「塩化物試験」では、塩化物の含有量や水量を測るために塩化物分析器と呼ばれる計器が必要です。
これらの製品は用途に応じて使い分けられています。正しく使用することで、求める数値を正確に把握でき、品質管理に活用できます。

コンクリート試験は品質を確保する重要なプロセス

今回は、コンクリート試験の内容や意義、試験に使われるさまざまな計器の特徴と用途を取り上げました。
コンクリート試験は、生コンクリートが材料として適切であるか、硬化した後の耐久性は施工に適しているかどうかを評価するためにも、欠かせない工程といえます。
空気量・水分量や塩化物イオン量のほかにも圧縮・引張・曲げにどれほど耐えることができるか、将来的に耐久性が落ちる可能性なども評価する必要があり、計器を適切に用いて計測することが、安全な構造物を造るために重要です。